
本書は、社会経済の不平等の測定の理論的また実証的手法の解説を記した序論の部と、日本・韓国・インドネシア・タイ・バングラデシュ・ネパールの6カ国の特徴的な社会的分配構造を分析した部の2部構成となっている。国ごとに分析の焦点は、女性の労働市場参加への影響、本国送金への影響、パラサイトシングルの問題など多方面に亘っている。それぞれの政府の統計局員が国別のミクロデータを利用して解析した結果が示されている。アジア諸国のこれからの社会変動の動きと今日にいたる現代日本の世帯構造及び就業形態の変動実態を比較して理解することができる論文集である。さらに、アジア各国の公的統計ミクロデータ開示の制度と実態を理解するための解説書としても、官庁、大学、図書館には必置の書といえよう。
◆編著者
神谷傳造(慶應義塾大学名誉教授)
松田芳郎(一橋大学・東京国際大学名誉教授)
菅 幹雄(法政大学教授)
◆内容
第1部 序論
1.所得分布の厚生経済学的基礎
2.公的統計のミクロデータラボラトリィの目的・構造・有用性
3.アジア諸国の世帯統計のミクロデータベース構築
第2部 20世紀後半から21世紀の国別分析
1.インドネシアの経済的不平等度の社会・人口的要因
2.韓国における所得の変動と低所得階層の動態
3.バングラデシュの送金の社会的不平等度に及ぼす影響
4.ネパールの労働移動と送金の世帯に及ぼす影響
5.女性労働は所得不平等を減少させるか:タイの事例研究
6.日本の派遣労働者の産業連関分析
7.高齢社会の所得分配に及ぼす影響:日本の事例
8.世帯の仮想的分割の所得分布に及ぼす影響:日本の事例